「セシル…それが君の名前なんだ…。また会おう…セシル」
アデルは笑顔で手を振り私の横をすり抜けて行った。
「…分からない……
違和感がある…」
「あいつ…血の匂いがしやがる…」
ルークは鼻を抑え、眉間にシワを寄せた。
「血の匂い…?」
「あぁ…物凄い強い匂いだ」
あんな笑顔の似合う人に血の匂い…
不釣り合いなのにあの人から感じる違和感と重なる。
そんな事を考えていると、ルークが地面に膝を付いた。
「ルーク!?
どうしたの?苦しいの?」
慌てて近寄り背中をさする。ルークは片手で顔を覆った。
「ヴァンパイアでも血なんて滅多に喰わない…
でも流石に匂いが強すぎるっ…理性がもつか…」
苦しそう…
ヴァンパイアにとって吸血衝動は欲求でありエネルギーだ。
純血種は吸血衝動を自制出来ると聞いた事はあるけど…
それにも限界はある。
「ルーク……
……大丈夫…大丈夫だよ…」
ルークの手を握り瞳を閉じる。
「♪〜♪〜♪〜」
言葉の無い歌を奏でる。
声が音になり癒しとなる。
「……………」
ルークの呼吸が落ち着いていくのが分かる。
「♪〜♪〜♪〜」
ルークは私を見て小さく頷いた。"もう大丈夫だ"と言う意味を込めて。
「…ルーク、今日は帰って休もう…」
「…あぁ…ありがとな…」
私は無言で頷いて
ルークの手を引いた。


