「無理だって~。さっきも結構怒ってたし~。」
自分でも分かるくらいへにゃへにゃした声。
「でも、知りたいんだろ~。」
かえの隣に並んでさっきよりもニヤニヤしている彼。
憎たらしいこの顔。
「声に出てますよー。と言うか、名前覚えて~俺かわいそーじゃん。」
「無理だって凛。あんた希美に名前教えてないでしょ。」
かえさん。ナイスつっこみうれしいけども、ちょっと遅いんじゃ
ないでしょうか?
「あり?そーだっけ?? 俺、凛矢ね。梶原凛矢。ヨロシクね、
神野希美ちゃ~ん」
「まぁそんなことはどーでもいいからさっさと聞いてきなよ。」
あきれ顔のかえがあたしに向き直って言った。
「なんで?かえ達が教えてくれたらすぐでしょ?」
当たり前の事を当たり前に聞くあたしを見て、
二人そろって深いため息をついた。
「分かってないな、きーちゃんは。」
・・・・きーちゃん。勘弁してよ。
「希美、さっき安曇野君怒ってたんでしょ?」
「うん。そーだけど。」
「だったら謝りに行くのがふつうだと思うけどなー。」
そりゃ、そうしたいけど。
さっきから横目でチラチラ見てると、安曇野君は今も不機嫌そうな
顔をしてて、すごく声がかけづらい。
絵里ともう一人の男の子が、機嫌を直させようとがんばってるみたいだけど、
無理そうだし。
