中止だ中止。知ってるだろ、俺様の事。
 今、世界で最もホットなスポーツ! 生まれたてのガキンチョから棺桶に片足突ッ込んだジィさんまで、あらゆる人間のハートを熱くさせる最ッ高のゲーム! そうだよ。
“エアスラスト”!
 スケボー? 冗談きついな。ありゃあ、確かにチョイといじったスケートボードは使うけどよ、れっきとしたオリンピックの競技だぜ? 一歩先を行く、全く新しい競技さ。俺様はそのエアスラで合衆国に金メダルを二回連続で持ち帰り、プロになってからは未だに無敗を誇る、いわばヒーローオブザヒーローのレオ様だ!
 次回? ああ、もちろん来年のオリンピックも金を頂くぜ。金メダルが欲しけりゃ、俺様の朝食に下剤でも仕込んどくか、でなけりゃあヒットマンでも送り込んどくんだな。がッははは!
 だからな、英雄の俺様は過去の失敗談をするのが大ッ嫌いなんだよ。アマチュア時代の話なんて論外だ。初耳だあ? 冗談だろ? 俺様のブログとホームページくらい、ちゃんと毎日チェックしとけッての!
 だからな、インタビューには応じるッつったけど、そういう事なら話は別だぜ。
 はあ? 聞きたいのは俺様の事じゃないだとう? この英雄レオ様を引っ張り出しておいて聞きたい話は俺様についてじゃないたぁ、舐めてんのかこの(自主規制)野郎っ!
 ああん? なんだ、てめえ“奴”を知ってんのか? ただのスポーツ雑誌の記者じゃねえな。いったい、何処でそんなネタを拾ってきやがったんだか。
 ちッ……仕方ねえな、少しだけだぜ。ヒーローは約束を反故にたりはしねえんだよ、畜生。その代わりだ。あんたも知ってんだろ、奴の事。知ってる限りの話、全部ゲロしていってもらうから、覚悟して貰うぜ?
 そうだな。あれは、まだエアスラがオリンピックの競技にも数えられていねえくらい昔の話だ。もう十年以上前の事だよ。当時から公式戦では無敗を誇ってた俺様は、調子に乗ってエアスラの王者なんて名乗ってたっけか? まあ、実際に俺様とまともに走(ヤ)れる奴なんて、世界中探し回っても一握りしかいなかった時代だ。極東の島国に少しだけ出来る奴が居るっていうから、優勝賞金いただくついでに軽〜くひねり潰してやろうなんて考えてたわけよ。
 ……懐かしいな、オイ。