助手席の要が、地図を睨む。

「この先の交差点を右ですね」

「わかった」

ジワリとアクセルを踏み、紅が頷いた。

屋敷を出発してから一日が経過しつつあった。

そろそろ日が傾き始める。

日常が崩壊し、人間らしい営みが出来なくなっても、世界は変わらず朝が来て、夜が訪れる。

太陽は恨めしいほどに、いつもの如く日没を迎えようとしていた。

…二人を乗せたアストロは、目的地の小学校に近づきつつある。

本来なら屋敷からここまで、車で二時間もあれば到着するであろう距離。

しかしパンデミックによる混乱とゾンビ達の妨害、事故車などによって塞がれた道路のせいで迂回を余儀なくされ、時間がかかってしまったのだ。