「おいっ!待て!待ってくれよ!」

くぐもった声で、男が車外から叫ぶ。

「悪かった!悪かったよ!お前らの仲間になるから!いや、仲間にしてくれ!頼む!お願いします!」

車のドアを叩きながら、哀願する男。

それは命乞いのようですらあった。

しかし…。

「行きましょう、紅さん」

男を一瞥すらせず、要は言う。

紅もまた、無言でハンドルを握った。

走り出すアストロ。

「おい!待ってくれよ!頼むよ、お願いだ!お願いします!」

アストロの後を、傷の痛みでよろめきながら男が追って来る。

その男を追うように群がってくるゾンビ達。

捕まって押し倒されるのは時間の問題。

それでも止まる事なく。

要達は男を見捨てて、その場を去っていった…。