研修が始まって早々、少し後悔し始めた。


「プラスとマイナス、言い方はそれぞれの性質ごとに異なっていて、正と負、陰と陽、白と黒なんて呼び方もある。」



さっぱり理解できない。


数学と科学が入り混じった話をされるぐらいなら、3時間ぶっ続けで数学のプリントを解いた方が楽だ。


しかしそういう僕に対して、数学のプリントなど10分も持たない彰は、斎木さんの話に興味津々で、前のめりで聞いている。



これが普通の人間とプラスィナーとやらの差?

そもそもこんな場所に引っ張ってきてこんな話を聞かせて、彰はなにをしたいんだ。完全にアウェイだろうこれ。



「“ディラックの海”とは知ってるか?」



聞いたことのある単語が聞こえた。

だいぶ昔にアニメかゲームで聞いた気がするけど、その言葉の意味は覚えてない。

けれどこの意味不明な研修の中で、聞いたことのある単語が出てきたのは非常に救いだった。