「紘奈がマイナリーと結ばれたら、紘奈はどうなるんですか…?」
紘奈が誰かと結ばれる。
そう考えるだけでどこか複雑な気持ちがよぎった。
「あくまで仮説だが、紘奈の魂と精神はその惑星の命になる。」
「…つまり…?」
「消えるさ。跡形もなく」
消える。
斎木さんはそうあっさり言ってのけた。
その言葉は“仮説”なんて曖昧なものではなく、まるで消えることが当然だと言うような口振りだ。
「なにを青い顔をしてる。紘奈の存在がもともとなかったことになるだけだ。人類にはなんの害もない」
紘奈が、もともといなかったことになる。
それは単純に紘奈が転入してくる前の生活に戻る、というわけじゃない。
10年前の、
僕の初恋も、幼いながらに体験したこの上ない喪失感も、すべて
なかったことになる。


