俊英は大学院を辞めた。

環境は、交流がないこと以外は順調であったが、母もいない今、通う必要もないと判断した。



母に入れと言われて入った大学院を辞めた途端、世界が広がった。


世界はこんなにも広大で、美しい。

人々が生きて、鳥がさえずり、植物は天を目指し伸びている。
青い空の向こうには無限の宇宙が広がっている。

教科書越しでしか見たことのなかった世界を、体全体て感じている気がした。


自分が恐怖に耐えたちっぽけな日々はなんだったのか、そう思わせるくらい世界が広く感じ、そう感じてしまうほど俊英の今までの人生は狭かった。



世界には、かつての俊英のように辛く苦しい思いを抱えている人間が山ほどいる。

どうにかそれを救ってやりたい。世界は広いのだ、と。


「公園」と名前が付いているが、遊具もなにもない広場のベンチで頭を抱えた。