「ふぃ~、危ない危ない」


少し周りを確認しながら紘奈が呟いた。

会話中は危機感なんてさっぱりなかったと思うけど…



「…あの人が、さっき言ってた斎木さん…?」

「そうだよー。見るからに変な人でしょ?」


アハハ、と笑う紘奈に返答に困った。


「紘奈は、あの人が嫌いなんだ?」

「……」

「紘奈?」

「……」



突然黙り込んだ。

らしくない。今までだったら黙ることなく勝手に話題を変えるぐらいの勢いなのに。

やっぱり聞いちゃいけなかったんだろうか…

そう思ったとき、突然ほっぺを軽く抓られた。


「…っ!?」

「へへ~、だんまりまさくんのマネ~」

「だっ…?」


笑いながらそう言った紘奈は、僕のほっぺから指を離し、前に向き直る瞬間小声で言った。



「ごめん、さっきの話をするのは早すぎた。またいつか話すね。あの式の話も、斎木さんのことも。」



なんだそれ。

中途半端で話を終えられた身になれ、気になって仕方ない。


だけど僕はなにも言わずに紘奈の後ろをついて歩いた。