僕らが腰掛けるベンチに、知らない長身の男が立っていた。
「“ゼロ”を、“プラス”にすればいいのさ。」
「へ…」
その男は本当に軽々しくそう言った。
怪しすぎる。
勝手に話に割り込んできて不審者かなんかか、と思って横目で紘奈を見た。
「斎木さん…」
「探したよ、紘奈」
“斎木”
この男が、親に追い出された紘奈を拾った、紘奈曰わく“おかしな人”
この状況は大丈夫なんだろうか…
修羅場とか公開DVとかされても困るんだけど…
そんな僕の心配をよそに、紘奈は明るく言った。
「わぁー、お久しぶりです!お元気でしたか?」
「俺から逃げておいてその態度か?元気なわけないだろう。大事な誰かさんが逃げ回るからな」
DVどころか異常なまでの愛情が言葉の端々から伝わってくる。
それさえも紘奈は「大変そうですねー」と軽くかわしていた。
“おかしな人”呼ばわりされるぐらいだから、もしかしてロリコンの変態?
いかにも変態っぽい人よりも、案外普通に綺麗な顔をしてる人ほどそういう傾向が強そうだもんな…


