「だけど、心が完全に巣喰われた時、俺の意識は消えた。長い昏睡状態に陥ったのさ。
目が覚めた時、俺は俺じゃなかった。紘奈サンの知ってるアホっぽい男になっていた。胸を蝕む闇もない、普通の男。
そして俺は普通の人生を再び歩み始めていた。この先もずっと、歩み続けていく予定だった。

だけど、君が現れたんだよ。紘奈サン」


「あ…た、し……?」



紘奈の顔が、かつての初恋の少女に重なる。


顔だけではない。

明るい振る舞い
元気な声
そこにいるだけで、胸が温かくなるような安らぎ

そして、自分には絶対に振り向かないという事実。





「君が現れて、俺の心は再び壊れた。」