握られた手が震えて熱くなって汗ばんできた。
汗ばんでいることを紘奈に知られてると思うと恥ずかしくて死にそうだった。
「一緒に歩くの、久しぶりだね」
紘奈が楽しそうな口振りでそう言った。
一緒に歩くのなんて、本当に10年ぶりほど。
僕については、紘奈に限らず人と手を繋ぐのだって、10年前に紘奈と繋いだっきりだ。
「ねぇ、あたし久々にまさくんとたくさんお話したいな。寄り道しない?」
紘奈は笑いながら近くの公園を指差した。
それじゃまるでデートじゃないか。
「い…いやだ」
「えぇー?なんでー?」
「嫌なもんは嫌だ」
ひとつ断れた勇気のついでに、繋がっていた手も振りほどいた。
振りほどいて思い出したように紘奈が控えめに呟いた。
「あ、ごめん…。あたし、手、汗かいちゃってて気持ち悪かったよね…。久々で、緊張しちゃって…」
聞いた途端、心臓が跳ねた。
握られた手の汗は、どっちのものだろう。
紘奈の手汗が自分の手に付いていると考えると、無性に恥ずかしくなって、心臓がドクドクと脈を打った。


