「なんだ吉岡、泣くぐらい尾田先生に怒られたのか?」


教卓の前に立つ担任の田中に指摘され、堪えてるのに泣きそうになってる事がバレて無性に恥ずかしくなり、何も言わずに俯いて自分の席に向かった。


そんな僕を無視して田中は前に向き直り口を開いた。




「というわけで、時季はずれの転入生だとは思うが仲良くしてやってくれ。まぁ、もう既に吉岡とは仲がいいみたいだけどな」



田中が席に着いた僕をちらりと見て嫌な笑みを浮かべた。

頼むから構わないでくれ。
正直今も涙を飲み込むのに必死なんだから。



「はーい、紘奈サンは吉岡とはどーいう関係なんすかー?」




この声はチャラくて有名な定岡だ。
紘奈にも手を出すつもりなのかどうかは知らないしどうでもいいけど、全力で空気を読んでくれ、頼むから。



「あたしとまさくんは幼なじみです。もう10年ぶりぐらいかな。ねっ、まさくん!」



紘奈の声は僕の同意を求めていたけど、僕は机に突っ伏してなにも聞こえていない振りをした。