――僕の娘は母親には毎回プレゼントを欠かさなくても、父親の僕は父の日だろうが誕生日だろうが無視だから悲しくなっちゃうよ。僕に懐いてくれるのはミミちゃんだけだ。今はまた家出中だけど。

 




 ギフト用のリボンがついた金のシールを最後にラップにはり、「よし、できた」とおじさんは満足そうに頷いた。





――ガーベラの花言葉いろいろあるけど、その中で僕が好きなのは『希望』、『常に前進』。子供の希望は親の希望だ。しっかりとお母さんを大切にしてあげてよ



芽衣に花束を手渡すと、おじさんは照れくさそうに笑った。

――僕も説教くさくなったなぁ。もう歳な証拠だな。


 希望。
 常に前進。
 



 この花言葉をお母さんに伝えたらどんな顔をするだろう。優しかったガーベラの香りが、急に鼻につきだす。
 

 親孝行。
 

 大学を卒業した今でも、絶えず心配をかけ続けてる私が親孝行だとは、間違ってもいえない。口には出さないものの、ずっと気にかけているのは知っている。あの日以来、前に進むことをやめてしまった私を。