…そう、俺はいつだってあの日を忘れた事は無い。
今でもあの頃を思い出すだけで怒りで体が震える。
"両親に捨てられた子供"。そのレッテルは何年経っても消える事は無く俺を苦しめ続けている。
俺はどんなに強がっていても…本当はただ寂しかっただけなのかもしれない。
ただ単に愛とか幸せとかに憧れを抱いていただけなのかもしれない。
自分が歩いてきた歪んだ…汚れた人生を消し去りたくて仕方なかった。
だから…今まで一度も過去を話した事は無かった。
こんな話を聞いてもきっと大抵の人間は同情するだけで…反応に困るだけだと分かっていたから。
でも麗華には話したい…俺の全てを知って欲しいと思った。
麗華なら俺の苦しみも汚れた部分も全て受け入れてくれる様な気がした。
全てを話し終えた後も悔しさや怒りが沸き上がってきてしまいそうで…それを堪え様として麗華を抱きしめる腕に思わず力が込もってしまった。
それでも麗華は何も言わずに俺の手をそっと掴んだ。
俺の手の平に冷たくも優しい一滴の涙が静かに落ちた…

