男は高そうなスーツを着ていて駅前の光景とは余りにも不釣り合いで…何と無く怪しいなと感じた。
「店って…何?」
「見ての通り、ホストクラブです」
「はぁ?俺にホストになれって言ってんの?」
場所は新宿。少し進んだ先には確かに男の言う様にホストクラブが立ち並ぶ新宿歌舞伎町がある。
でもバイトを探している様な俺には関係のない世界だと思っていた。
「そう、直感で君はNo.1になれると思ったんです!今、ちょうど一人辞めてしまって…No.1になれる様な新人を探してるんです。だから是非うちの店に来て欲しいなと…」
必死になって頼む男を見ている内に不思議とホストという仕事がどういうものか興味が湧いてきた。
「No.1になれたら大金稼げるんだよな?だったら…やってみるよ」
同じ金儲けをするならバイトで少しずつ稼ぐより、ホストでNo.1になって大金を稼いだ方が楽なんじゃないかと考えた俺はホストの道を自ら選んだ。
嘘をつく事も女を騙す事にも慣れていた俺はホストとして順調に成功を果たした。
駅で俺に声を掛けた男…オーナーが居なければ<shelter>のNo.1ホスト《琉依》は存在していなかったのかもしれない。
でも結局、ホストとして成功しても俺の生活はあの頃から変わらず歪んだままだった。
俺はずっと両親に捨てられた過去…闇を…抱え続けたままだった。

