「分かった。…麗華には全て話すよ」
麗華が俺に全てを話してくれた様に俺も全てを話す必要がある。
例えどんなに汚れた過去であろうと…それが俺の全てなのだから仕方ない。
過去を変える事など誰にも出来ない。消す事だって出来ない。
だからこそ俺はありのままの真実を全て伝えると決めた。
麗華の手を引きながらリビングに戻った後、今度は俺が後ろから抱きしめた。
酷い表情をしてしまうだろうと思ったから俺の顔が見えない様に背中越しに全てを語った。
――――――‥数十年前。
俺がまだ小学6年生くらいの頃。
いつもの様に平凡な学校生活を送っていたある日。
学校から帰った俺を待ち受けていたのはまだ幼かった俺にとってはとても残酷な事実だった。
古くなったランドセルから鍵を取り出して玄関の扉を開けた先には家具も何もかも無くなった空っぽの部屋が広がっていた。
母親も父親も仕事をしていて家に帰って来る事は滅多に無かった。
ついに俺は一人になったのかと理解するのには結構な時間が掛かった。
この時から俺の心には寂しいとか愛されたいとかそんな感情はたぶん何処かに消えてしまった。
孤独を孤独と感じなかった。
もともと幸せな家族の思い出とかそんなものを知らないまま生きてきた俺は…ただ一人に慣れていたのかもしれない。

