エレベーターを降りた先の駐車場には既に麗華が俺の車の傍で待っていた。
それを見ただけで何故か心の底から安心した。
今日あの男が俺の所に来た事は麗華には伝えない。
伝えてしまえば…たぶん麗華は俺に心配を掛けたく無い一心で、またあの男の元へ戻ろうとするだろう。
もしあの男の元に戻れば、麗華はまた傷を増やすことになる。
それだけは何としてでも避けたかった。
いつもの様に助手席に麗華を乗せて車のエンジンを掛けた。
「よし、じゃあ…何か美味いものでも食べに行くか!」
「えっ…本当に?」
隣に座る麗華に声を掛けると瞳を輝かせながら俺を見つめた。
「あぁ、ちょうど腹も減ってきたしなー」
その光景が何と無く面白く感じ、少し笑いながら俺が答えると麗華は嬉しそうな笑顔を向けながら喜んでいた。
「何食べよっかな〜」とか言いながら楽しそうにしてる麗華を横目で見ながら、車を夜の街の中を走らせた。
群れるタクシーを追い抜かす事もせず他愛も無い話をしながら、久々にゆっくりとした時間が流れているのを感じていた。