ずっと女を騙して信じ込ませることを仕事として俺は今も生きている。
だからこそ誰か特定の人間に深入りせず…どんな親しい人間だろうと簡単に信じたりしなかった。
誰かに愛されても誰かを愛する事など一度も無かった。
だから俺は麗華への特別な感情をどうしても否定したかったのかもしれない。
俺の傍には今まで特別な人間など存在しなかった。
…そしてこれから先も現れる事など無いと思い込んでいた。
「俺はそんなに信用できる様な人間じゃねぇよ?ただのホストだし」
俺は煙草を取り出しながら慣れない自分の感情をごまかす為に冗談っぽく答えた。
「大丈夫。凌はちょっと変わったホストだから」
麗華も俺のそんな言葉をからかう様にして無邪気に笑っていた。
麗華の前では何故か俺自身も知らなかった本当の自分でいられる様な気がした。
麗華と共に笑いながら凌として生きる事に…少しの魅力を感じ始めていた。