真っ暗な夜の風景を優しい街灯の光だけが弱々しく辺りを照らしていた。
麗華を助手席に乗せた後、運転席に乗り込み車のエンジンを掛けた。
車内に単調なエンジン音だけが静かに響いていた。
「ごめんなさい…また迷惑かけちゃって…」
その音に掻き消されるくらい小さな麗華の謝る声が聞こえた。
「…迷惑なんか思ってねぇよ」
小さく震えながら謝る麗華の頭に手の平をそっとのせた。
DVの後遺症なのか…麗華は誰に対しても謝る事が極端に多かった。
謝る必要なんかねぇのに、たぶんあの男にも謝り続けていたんだろう。
そう考えるとただ悔しくて堪らなくなった。
もう少し早く麗華に出会っていたら…
柄にも無くそんな事を考えていた。