汚れた天使














そして、少し躊躇いながら麗華はゆっくりと手首に巻かれた包帯を外していった。





その腕には真っ直ぐに伸びた傷が深く深く痕となって現れていた。





見事なくらい並行に並ぶ傷痕を見て…俺の頭の中に信じ難い考えが浮かんだ。





「もう充分なくらい傷だらけなのに…気づいたら自分で自分を傷つけてた。何も変わる訳ないって分かってるのに、楽になれる様な気がして…」





麗華は嗚咽に消されそうになりながら必死に言葉を絞り出していた。





人間は辛くてどうしようも無い時…自分を傷つけて痛みを紛らわせようとする。




痛みを感じる事で少し楽になれる様な錯覚に陥る。





それくらいにまで堕ちた人間にしか理解してもらえない傷み。





そんな傷みや辛さを抱えたまま誰もが必死に生きている。




どんなに笑って楽しそうにしていても…本当は弱くて…今にも壊れそうなくらい傷ついていた。