何をする訳でもなく殺風景な部屋で過ごす内に段々と退屈に感じられてきた。
俺の家は黒一色の家具ばかりで、ホテルで過ごすのとそう変わりないくらい全く生活感が無い。
「よし、今からどっか行くか!」
「えっ…今から?」
俺の唐突な提案に莉奈は驚きながら勢いよく顔を上げた。
「ずっと家に居ても…退屈だろ?たまには息抜きしないとな」
「でももう朝だし…もし誰かに見られたら噂になっちゃうかもしれないし…」
「ん?…噂?」
確かに気づかない内にもうすっかり夜が明けて朝になろうとしていた。
でも莉奈の心配している事は俺にはよく分からなかった。
「だって…凌はNo.1のホストでしょ?あたしと一緒に居る所を見られて、もし噂でも立てられたら…迷惑かけちゃうし…」
あぁ…なるほど。
そりゃあ、確かにもし噂でも立てられたらNo.1でいるのは難しくなるだろう。
客数が減るのと同時に当然のことながら売上も減少していくことは間違いない。店にも迷惑をかけるのは目に見えている。