「凌がこの店にいるって知って…この辺りを歩いてたら偶然この車を見つけたの」
驚きを隠せない俺とは対照的に、平然と穏やかな表情ですらすらと話し出す莉奈。
「わざわざ俺に会いに来たのか…?」
「うん。あたし…帰る場所無くなっちゃったの」
悲しげに笑う莉奈を見て、俺はそれ以上何も言えなくなった。
どういう意味で言ったのかは分かんねぇけど…問い詰める気にはなれなかった。
「…莉奈……乗って」
それ以上は何も聞かず俺は助手席のドアを開けた。
「…うん、ありがとう」
再び莉奈を助手席に乗せて車は俺の家に向かって走り出した。
静けさを含んだ夜の街がいつも通り窓の外一面に広がっていた。