甘い嘘を囁きさえすれば女は必ず喜ぶ単純な生き物だ。
自分がまさか騙されているとは思いもしないまま…簡単にどんな嘘も信じ込んでしまう。
「私も琉依くんのこと大好き〜っ♪」
すっかり信じこんだ女は嬉しそうに頬を赤らめて俺の為にあるだけの金を使いまくる。
まるで俺の嘘を金で買うかの様に。
上手くもない酒を大量に体に流し込んで、嘘の笑顔を作って客を喜ばせる様な嘘を吐いて…この仕事は何もかもが嘘だらけだ。
ホストという仕事は世間が思ってるほど楽では無い。
普通に会社勤めをするとかよりもよっぽど辛い仕事だ。
精神的にも…そして体力的にも。
確かに俺も始めの頃は女を騙すだけの楽な仕事だと思っていた。誰にでも出来ると軽く見ていた。
そもそも好き好んでこの仕事を選んだ訳じゃなく"給料がいい"ただそれだけの理由で選んだ。
あの時はただ金さえ手に入れば幸せになれると思い込んで…何も考えずにただ直向きに働き続けていた。
でも金だけじゃ幸せになれるはずも無くて…むしろ金があればある程どんどん汚れた世界へ堕ちていく。
幸せは金で手に入れる事が出来るほど単純なものでは無かった。