―――――…数日後。






「長い間…お世話になりました」





俺の目の前で驚きながら固まっているオーナーに向かって俺は深々と頭を下げた。




「…琉依。…本気なのか?」

「はい、本気です」




オーナーの表情を見ても俺の心が揺らぐ事は無く…それぐらい俺の意志は固かった。




「お前が居なくなったらこの店…いやお客様にどれだけの影響が及ぶか分かってるのか?」


「分かってます…けどもう決めました。何を言われても変える気はありません」




俺が居なくなれば店はどうなるのかなど今まで一度も考えた事が無かった。




恐らくNo.1ホストがこの世界自体から消える事など前代未聞だろう。




今まで来ていた俺の客は当然店に来なくなり売上も下がっていくかもしれない。




それくらいの事は俺も充分に分かっていた。




「オーナーには本当に感謝してます。…でも俺にはやらなきゃいけない事があるんです。だからもうここには居られません」




俺じゃなきゃ出来ない事がある…その為に俺は全てを捨ててそれに全てを賭ける覚悟をした。





俺自身もまさか長い間お世話になったこの店と街に別れを告げる日が来るなど予想さえしていなかった。