「莉奈なら…ついさっきこの店を辞めたわ」
分かり切っていたはずの言葉に愕然としながら俺はただ絶望感に襲われていた。
「そうですか…」
力無く一言だけ言葉を返し重い心のまま店を後にした。
車へ戻った後、俺の中の何かが崩れ落ちていく様に自然と瞳からは涙が零れ落ちた。
血が滲みそうな程強く唇を噛み締め嗚咽を押し殺しながら静かに泣いた。
麗華の選ぶ方を受け入れる…そんな言葉はやはり俺の本心などでは無かった。
俺はどれだけ強がっていてもただの弱い人間だ。
大切なものを失う事の辛さなど知るはずも無かった。
きっと麗華は俺に迷惑を掛けない為に俺の傍から離れたんだよな…?
…でも俺は麗華を迷惑だとか思った事なんか一度も無いよ。
俺の傍に麗華が居てくれれば…他には何も必要無かった。
あんな金を残してくれたって…少しも嬉しくなんかねぇんだよ…
昇り始めた朝陽の暖かさも今の俺にはただ虚しく感じた。