「今回は軽い症状だけだったので点滴が終わりましたら、すぐに帰って頂いても構いませんので。では…お大事に」
深々と頭を下げた後、医者と看護婦はゆっくりと病室から出て行った。
腕に繋がる点滴の液が一定のリズムで落ちていくのを見ながら、俺は初めて死への恐怖を感じた。
今まで自分の健康とかどうでもよくて…いつ死んだって構わないと思っていた。
特に生きる意味とか目的とか夢とか…そういう類いのものは俺の中には無かった。
だから長生きしたいとも思わ無かったし寧ろ若い内に死んじゃった方が楽なんじゃねぇかとか…そう思っていた。
生きる事が辛いとかそんな深刻なものでは無かったけど…ただ意味もなく生きる事に嫌気がさしていた。
…でも、今の俺には生きる意味がある。
やっと希望とか夢とか幸せとかが分かってきた…だから今ここで死ぬ訳にはいかない。
今はただ麗華の為に…生きようと…麗華の為ならこれからも生きていい様な気がするんだ。
俺はあいつに約束したから。
ずっと傍に居ると――…

