「仕方ねぇよ!!…全部…この女が悪いんだ!!」
「麗華は何も悪くねぇだろ!!」
「何も知らねぇくせに勝手な事言うな!! こいつは…俺を裏切った汚ねぇ女なんだよ!!」
静まり返る深夜の路地に怒鳴り声が響き合った。
麗華とこの男との間に何があったのかは知らねぇが…こんなやり方、必要な訳が無い。
「金が欲しいなら幾らでも渡す。その代わり…二度と麗華の前に現れるな」
男の胸倉から腕を離して財布から取り出したキャッシュカードを男の前に差し出した。
たった数年間掛けて稼いだ汚い金なら…それが例え全財産だろうと俺には何の価値も無い。
男が素直に受け取ろうと手を伸ばした時…
「…凌…やめて。…そんな人に渡す必要なんて無い…よ…」
弱々しく震えた麗華の声が背中越しに聞こえた。