窓を眺めていた。

外は雨が降っていて、ぱらぱらと硝子に雫が垂れる。

小さな雨粒が、寄り添い落ちていくのを、飽きもせずに見ていた。

ベッドサイドの小さな窓にかかる、白いレースのカーテンを、全開にして。

気まぐれに、内側からそっと指先で触れては、水滴がつくる流れを辿る。

滑らかな硝子なのに、時折角度をつけて落ちて行くのが不思議だった。

思った道を通らないのは、なかなかに楽しくて、時間潰しには丁度良い。

白く、よくアイロンのあてられたシャツを着ていたが、黒のほうがいいかもしれない。

窓硝子の反射が、折角のゲームに水をさすから。


「起きたのか」

背後から、掠れた声がかかる。

振り返らなくてもわかる。この部屋の主で、僕の恋人である颯だ。

「起きてたのか、でしょう」


窓を眺めながら応えると、後頭部の髪をさらりと颯の指先が掬った。