俺は夏が嫌いだ。



高校の教室は暑いし、

部活のバスケの練習は長いから。

それだけだけど、ひどく心がおれる。


暑くてキツい。

それは、思った以上に精神的なダメージにもなる。






不意に、俺は腕時計を見た。


―10時30分


なかなかの遅さだ。



今は、別に好きじゃないバスケの練習を終えて、
帰宅している途中。



ふと、手前の横断歩道の信号が点滅しだした。


それを見ると、俺は無意識に走っていた。



『寺原 寛太』と、自分のネームが入った通学鞄が激しく揺れる。



蒸し暑い真夏の夜風が、俺の背中を押した。



俺が横断歩道に入った途端、大きくて黒い何かが俺の視界に入ってきた。




徐々に迫ってくそれに、俺は目をやる。




「…ぇ……?」




次の瞬間、もの凄い衝撃と共に、俺の視界は黒く塗りつぶされた。