車を降りて彼女の車を見送りながら考える。何があそこまで彼女をそうさせたのか。彼なのか、恋なのか。


けれど、考えても考えても答えが近付くわけでもなく、むしろ、深い森に迷い込んでいくだけのように思えて、考えるのを止めた。


言葉に嘘はなかった。もし、どうしても彼女が奥さんの所へ乗り込むと言うのなら、付いて行くつもりだった。


どれほどの言葉をもってしても、どんな正しい言葉を並べても、彼女を止められはしない。それくらい、彼女自身もきっとわかっている。だからこそ苦しいんだ。


それなら、一緒に行く。その言葉がせめて彼女の衝動のブレーキになれたら。


私なら、失うものは何もない。