ハットリ君はあの人と同じ顔をしていたけど、中身は全然違う人だった。…当たり前だけど。それによく見てみると全然違ったし。一緒にいる時間が増えるにつれてそのことがよくわかった。


ボーリングも下手だし車の免許も持ってなかったし、よくわからない勉強してたし。キスだって………以下自粛。


ハットリ君はハットリ君。だから、これ以上好きになるのが怖かった。


好きになったら終わりだ。好きになったらきっと、私は私じゃいられなくなる。同じようには過ごせなくなる。好きになったらきっと、私が負ける。


いくつになっても、きっと私は好きになった人に勝てない。


……勝ち負けじゃないんだろうけど、そこはやっぱり大会系だからってことで。


だけどいい加減、この連鎖を断ち切りたい。基本的にポジティブでがむしゃらで「やるっきゃねぇ!」な私なのに、あの人のことになると途端に弱くなるのがイヤだった。


だから今度は、全然違う人と出会いたい。だからごめんね、ハットリ君じゃダメなんだ。だけど、そう思えるようになったのもハットリ君と過ごした時間があったからだった。


だから…ありがとう、ハットリ君。こんなこと口に出しては言えないけど。ありがとう、ハットリ君。