家族には家族の価値観があるけれど、それはそれで大切なのだけれど、社会一般的な価値観というものは、時にそれを上回ることがある。


つまり、「世間体」と呼ばれるモノだ。


一度、通勤途中に私の車が動かなくなってしまった時、私の兄が勤めている自動車屋さんに会社まで車を引き取りに来てもらったことがあった。その時、引き取りに来てくれた人が兄にこう言ったそうだ。


「お前の妹すげぇな。あの会社の事務館にいるんだって? 俺、びっくりしたよ。工場って聞いたからてっきり工場内かと思ったら…お前の妹、あんな所で働いてんのか?」


兄からそれを聞いた両親は笑いながら私にそのことを話した。その後、ことあるごとに同じ話を繰り返し話す両親を見ていると、あぁ、ようやく親孝行ができたのかもしれないなと思った。


私の両親が世間へ向けて誇れるモノが。


小さいけれど、両親にとっては大きなことだった。


だけど、それも今日で終わりを迎える。