5月末日に定年退職を控えていたこともあり、加藤さんは仕事にやり残したことがないよう、各課を渡り歩いていた。


加藤さんは独学でパソコンを学び、複雑なシステムをクリックひとつで簡単に行えるように開発をしてきた人なので、このタイミングで更に改良を加えたいと考えていたらしい。自分の仕事を引き継ぐ大久保さんの為にも。


そんな加藤さんが体の不調を訴えていたのは一月も半分過ぎた頃だった。


お腹が痛いと繰り返していたので、無理をせずに休んだらどうかと大久保さんが言った。


けれど、我慢強かった加藤さんはギリギリまで会社に出社し、仕事を続けていた。その我慢強さが、こんな結果を招くなんて思いもよらず…