「お前が夏のコンクール終わって、音楽室にいたの覚えてる?
実はさ、俺あの日お前の気持ちに気付かないふりしようって決めたんだよね」
「わかってるよ。わかってるから」
…ちょっと、待て。
なぜそこで泣く?
もしかして、あの時俺の気持ちは伝わってなかったのか?
だとしたら、俺はお前にものすごく辛い思いをさせてたのかもしれない。
「俺、その日にもうひとつ決めた事があるんだ」
「…何?」
不思議そうな顔をして俺の顔を見上げる。
「俺も、自分の気持ち、伝えないでおこうって」
「…今なんて?」
一気に驚いた顔になる。
見てて飽きないよな、お前。
まぁそんなところも好きなんだけど。

