…明日からもうこの学校にあいつはいない。
いつだって俺に笑いかけて。
いつだって俺にまっすぐ向き合ってきてくれた。
そんなあいつに、俺は応えてやれてただろうか。
あいつに気持ちを伝えないと決めたのも、ほんとにあいつのためだったか?
さっきだって、ここが職員室だってだけで言葉をつぐんだ。
自分自身を守りたかったんじゃないのか?
教師としての俺は、正しい判断だと思う。
でも「俺自身」は、本当にこのままあいつを卒業させていいのか?
教師でもなんでもない俺は、あいつにこの気持ちを伝えなくてもいいのか?
今ならあいつはあの場所にいると思う。
そう思うといてもたってもいられなくなり、俺は職員室を出た。

