「人間にはさ、必ず伝えなきゃいけない気持ちと、伝えちゃいけない気持ちがあると思うんだ」



それは、今俺が抱えてる気持ち。





伝えたいけれども、今伝えるわけにはいけない気持ち。









「お前もたぶんそんな気持ちあると思うけどさ、


俺はそういう気持ちを持ったとき、




相手がそれを聞いてどう思うかって考えるんだよね。




相手にとって、伝えてもいいのか、伝えちゃだめなのか考える。






なかなか難しいけどな」







この話をすることで、俺の気持ちを知ってほしかった。




直接伝える事はできないからこそ、お前には俺がいるんだって知ってほしくて。









そして、あいつもおんなじ気持ちでいてほしい。














「あーごめん。




意味わからんよな、急にこんな話されても。





また後で鍵閉めに来るから。




お前も早く帰れよ」





そう言って俺は音楽室を出た。








今の話を聞いて、あいつは辛い思いをするかもしれない。






でも、あいつの気持ちを知った上で俺の気持ちを伝えたらもっと辛い思いをさせると思うんだ。







だから俺はお前にこの気持ちを伝えないって決めたんだ。