おしゃべりな王子様

「どうしたの?」

俺が少し前の記憶に思いを馳せていると、凜がスプーンを運ぶ手を止めた。


「あぁ、このジャガイモ……」


まさか有紀のカレーを思い出していたなんて言えず、俺はスプーンでジャガイモをすくった。


皮が所々残っているかと思えば、明らかに皮を剥き過ぎてえぐれている部分がある。

ジャガイモの皮もろくに剥けない奴だけど、俺にはそれが嬉しかった。

不器用ながらも、一生懸命作ってくれた証拠だから。

「前より上手くなったな。」

不安そうに、スプーンの上のジャガイモを見つめる凜の顔がパッと笑顔になる。

あぁ……この笑顔だ。

この笑顔の見れるなら、塩鯖入りのカレーでもいい。

俺は、凜を選んで良かったんだ。


「凜、ありがとうな。」


俺は、幸せな気持ちでカレーを口に運んだ。


その味はやっぱりマズかった。