「…失礼します」



下を向いてお父さんの顔を見ないように歩き始めると、何故だかお父さんに呼び止められた。



「何か?」



それでも私はやっぱりお父さんの顔を見る勇気がなかった。



『今やっと、愛莉の気持ちが少しだけ分かった様な気がする』

「え…?」



お父さんの思わぬ一言に顔を上げると、とても辛そうな顔をしていた。



『愛莉を守る為には誰にも存在を知られない事が一番だと思っていた。だが、今こうやって他人行儀に話をされると辛いものがあるな』

「どうして…今更そんなことを言うの?今更そんなこと言われても…私…どうすればいいのか……分かんないよ……」

『愛莉…お前は私たちとって今も昔もこれからも、大切な家族だよ。愛莉の言う通り今更かもしれないが、お前さえよければ世間に存在を隠すのを止めようと思っている』



お父さん…。


不安そうな顔をして微笑むお父さん。


テレビでは見せない顔…。