秘め事

『…実家で何かあったのかよ』

「初めてお父さんに引っ叩かれた。こんなことになるならプレゼントだけ置いて直ぐ帰ればよかったって後悔してる」

『喧嘩したのかよ』

「私ね、家の中でしか家族として存在してないの。一歩外に出れば赤の他人…もっと遠い存在かもしれない」

『意味…分かんねぇんだけど』

「ｱﾊﾊ…そうだね」



愛莉は泣かないように必死に笑っているように見えた。


俺は普通の家庭で育ったから、愛莉の言っている事が全く理解できなかった。



『家族と仲悪ぃの?』

「ううん…いっぱい愛情注いで育ててくれたよ。お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも…。だから余計に家族で出かけた思い出が無いことも、外で会っても声を掛けることが出来ないことも、凄く…辛い」

『余計意味分かんなくなった』

「…世間に私の存在は公表してないの」



世間にって…なんだよそれ。


俺の頭の中はｸﾞﾁｬｸﾞﾁｬしていた。



「私の家族…みんな芸能人なんだ……」