「絶対浴衣な?」


陽翔はまた笑顔を浮かべて言う。


「…あたしに拒否権は?」


あたしはわかりきった答えを
確かめるように問う。


「あると思う?」

「ないと思う」


あたしは渋々了承した。


ただ、今日、陽翔の誕生日なのに
嫌な思いしかさせられなかったから。

浴衣着るぐらいなら
いいかなって思っただけ。


それ以上に理由などない。


だけど陽翔に頼まれたことは
何の苦にもならない。

それどころかどこかで
嬉しいと感じている自分がいた。


その気持ちに気づくのは
まだまだ先の話。