じっと 飽きもせず
さっきから 振袖を見てる母は

あの頃を思い出しているんだろうね。


――綺麗に化粧して
髪を結って
着物を着た私を
甲介さんに見せたかったわ。
驚く顔が 見たかったわね。


着物を見つめたまま
母の頬に 一筋の涙が流れたのが見えた。



二人が 一緒に住み始めたという
一応の結婚記念日に
今年は 母に
ウェディングドレスを着せ
父に タキシードを着せて
記念の写真を プレゼントしよう。

そして あたしも
彼の遺影とともに
ウェディングドレスを着て 撮ろう。


ウェディングドレス…


――― 一生に一度なんだもの。
着てみたかったわ。
ウェディングドレス。
甲介さんと 一緒に…… ――――