【海翔side】

 ~夏休み前日~

「あぁ~明日から夏休みだな、海翔」
 と夏休み気分な希一が話しかけてきた。
「あぁ」
「んだよ? 楽しみじゃねぇのかよ?」
「別に…夏休みなんて、何もねぇじゃん」

 奈緒は部活で忙しいとか言ってたしよ…。全く…「海翔と、もっと一緒に居たい!」って言ってたくせに。だったら帰宅部にしとけよなぁ。よりによって一番忙しい吹奏楽部に入るんだか…。

「んだよ…。奈緒ちゃんとデートの約束もしてねぇのかよ…」
「色々あんだよ」
「ケンカか?」
「はぁ? んなことねぇよ」
「どうせ、お前のことだから、奈緒ちゃんを無理矢理、押し倒して泣かせたんだろ?」

 はぁ?? お前マジで、それを言ってんのか? さすがの俺もキレるぞ…。

「んな訳ねぇだろ!!」
「…キレんなよ…。冗談に決まってんだろ…」
「無理矢理ヤる訳ねぇし。ちゃんとお互い同意でヤッたに決まって…!?」

 ヤベッ…!! 言うつもりねぇのに…。

「…!?」

 驚いた表情で希一が見てくる。

「…お前…奈緒ちゃんとヤッたのかぁ~♪」

 おまっ…!! 声でけぇよ!!!
 廊下に居た生徒が一気に俺たちを見ている。

「希一…。てめぇ…」
「あっ!! …わりぃ」

 コイツ。謝るつもりねぇだろ!?

「希一君…。一回殴られてみる?」

 俺は希一に向かって笑顔で言ってみた。

「えっ…! あっ…その~…あっ!! こ、今度俺たちのグループと、そいつらの女連れて温泉旅行、行かねぇ?」