【海翔side】

 中庭で女共と集ってた。間違ってデートの約束をしてしまった。その時奈緒の名前が聞こえた。
 少しした先に奈緒の友達と奈緒がいた。奈緒は泣いてる様子だった。

「海翔君…?」

 俺は思わず立ち上がってしまった。今すぐ抱きしめたい衝動にかられた。
 しばらくして奈緒は走って行ってしまった。
 俺は期待してるのかと思ってしまった。期待すればするほど空しいだけなのに…。

「海翔君~。どしたの?」
「悪ぃ。戻るわ」
「えぇ~。いつデートするか決めてないよ」
「後で教室行くわ」
「分かった~。絶対来てね!」

 女共は適当に手を打っとけばなんとかなる。
 気付けば奈緒の後を追っていた。関係ねぇって決めたのに。

 奈緒は希一とぶつかった。危なっかしいなぁ。
 会話は聞こえねぇけど泣いてる様子だ。俺はこう言う時でも嫉妬心が強い。

「俺の傍で泣けよ…」

 この思いは、もう伝わらない。手に戻したくても戻せねぇ。ただただ奈緒を想う日々だ。

「…おい」
「あぁ?」

 話しかけてきたのは希一だった。いつの間にか話は終わってたみたいだ。

「奈緒ちゃん泣かせんなよ」
「お前には関係ねぇだろ。俺にも関係ねぇ…」
「関係ねぇとか言ってる割には何でここにいんだよ」
「…通りすがりだ」

 俺は歩きだそうとした。その時希一に腕を掴まれた。

「んだよ…」

 パァッン。俺は希一に思いっ切り頬を叩かれた。

「っ…。何すんだよ! テメェー!!」
「いい加減にしろよ! 奈緒ちゃんにはお前しかいねぇんだよ! 何で分かんねぇんだよ」
「お前に何が分かんだよ!!」
「分かんねぇよ! お前の考えてる事なんてよ!」
「だったら…」
「海原ってヤツに何て言われたが知んねぇがよ、何逃げてんだよ! お前は奈緒ちゃんの事信じてねぇのかよ!」
「あぁ? 信じねぇヤツがいんのかよ!」
「信じてんならお前が好きだって言われたら信じてやれよ! お前はガリ勉に負ける様なヤツかよ! その程度かよ!!」
「ふっ…。上等じゃねぇかよ」
「行ってやれよ。今頃保健室で目覚ましてるはずだ」
「あぁ…その前に…」
「?」

 パァッン。俺は思いっ切り希一を殴った。

「いってぇ…。何で殴れられんだよ!」
「仕返しだ。バーカ」
「ふっ…ハハ。取り戻してこい」
「あたりめぇだ」

 俺は保健室に走り出した。
 希一に言われなきゃ今もこれからも奈緒を泣かせてた。奈緒は俺を想っててくれた。なのに俺は付き離してしまった。出来るならやり直したい。
 奈緒が好きだ。アイツを一人占めしたい。奈緒をもう離したくねぇ。