【奈緒side】

 もうすぐ文化祭かぁ。
 私のクラスメイド喫茶やるんだもんなぁ。海翔に言ったら喜んでくれるかな?

「今日はここまでにしましょうか、お疲れ様」
「お疲れ様でした。先生」

 やっと終わった~。さっ、帰ろう!

 バタンッ。いきなりドアが開いた。

「!?」
「奈緒…」
「か、海翔!?」

 息を切らしてた。走ってきたのかな?

「奈緒…」
「は、はい!」
「お前のクラス…メイド喫茶…やるんだってな」
「えっ! 何でそれを…」
「希一が情報を手に入れて聞いた…」
「…そうなんだ」

 希一君の情報網、恐るべし…。

「…着るのか?」
「へっ? 何を?」
「だからメイド服を!!」
「あぁ…うん」
「マジかよっ!?」
「っ!?」

 海翔がいきなり大声出すからビックリした。
 私も本当は裏方に回りたかったんだけど…
 「裏方は沢山いるから奈緒ちゃんはメイドさんね!」なんて言われちゃうし…
 ってか私そもそもメイド服着るようなタイプでもないし…海翔も予想なんてしてなかっただろうな。

「何で受け入れるんだよ」
「えっ。だって裏方に回ろうと思ったんだけど沢山いるからって言われて…」
「はぁ…」

 海翔こんなにも私のメイド服姿を見たくないんだ…。

「か、海翔がそんなに嫌なら今からでも断ろうか?」
「…いや、しなくていい」
「何で?」
「詳しく聞くな」
「気になるんだけど…」
「気にするな」

 何なの!? 私がメイド服着るのが嫌なくせに、断らなくていいとか言って。

「はっきり言ってよ!」
「…!? 怒んなよ」
「怒ってなんか…海翔が言ってくれないだけじゃん!?」
「言えるかよ!」
「海翔いつもは、はっきり言うのに! 肝心な時だけ言わないんだから!」

 なかなか言わない海翔に、ついつい口調がキツくなる。
 そして私の目には涙がたまってる。