【海翔side】

 あの事件から2週間。夏休みもとっくに明けている。
 希一はあの仁南って女と別れたらしい。本人は相当ゾッコンらしかったけど…。俺には仁南って女の良さが分かれねぇ。
 でも、ショック受けてるだろうな、希一のヤツ。

「おぅ! 海翔!」

 俺が思ってるほどへこんではないみてぇだ。

「おう」
「あれ? 奈緒ちゃんいねぇんだ」
「あぁ…文化祭近いから練習だとさ…」
「へぇ、文化祭…もう文化祭かぁ!!」
「んだよ、テンション高いじゃねぇかよ」
「へへーん、俺いい情報持ってきてやったんだぜ!」

 何の情報を手に入れたんだか分かんねぇが得意げに自慢する希一。

「何だよ」
「聞きたい?」
「焦らすなよ」
「奈緒ちゃんのクラスの出し物について」
「奈緒の? もう決まったのか? 俺達まだ決まってねぇじゃんか」
「へ? 俺達も決まってるけど…」
「聞いてねぇぞ」
「お前…さてはサボってたな」
「かもしれねぇ」
「俺達はホスト倶楽部やるんだぜっ♪」
「はぁぁ!?」

 ホスト倶楽部!? あり得ねぇ…。

「お前のカッコいい姿を見たいって言う意見が殺到してんだとよ」
「何で俺が…」
「と言う訳でよろしくな」
「…はぁ…」

 よりによってホスト倶楽部だと…?
 奈緒が俺のクラスの模擬店に来たらどうなるか…。
 ってか奈緒のクラスは何やるんだ?

「なぁ…奈緒のクラスは何やるんだよ」
「あぁー…海翔キレんなよ」
「はぁ? どう言う意味だよ」

 俺がキレる? それって…まさか…

「メイド喫茶」
「ざけんなよ!!」
「キレんなって言ってるじゃねぇか!」
「奈緒が…メイド服で…他の男にニコニコしながら…なんて許さねぇ!」
「まぁまぁ…俺達も奈緒ちゃんのクラスに遊びに行こうぜ」

 やっぱりメイド喫茶かよ。
 でも、裏方の仕事の方かもしれねぇし、あの奈緒がメイド服着るなんて考えられねぇし、大丈夫だ…ろ?