【奈緒side】

 何で…? 何でなの!? 何であんなとこで海翔と仁南さんがキスしてるの…?
 そっか…海翔、ついに私に飽きたんだ…。海翔みたいな人は仁南さんみたいなギャルって感じな人がいいに決まってるよね。
 普通な私じゃあ満たされないだろうし…。はぁ、私が海翔の彼女になったから今更だけど、罰が当たったのかな?

「奈緒ちゃん!!」

 希一君が息を切らして私を追いかけてきてくれた。

「奈緒ちゃん…」
「私、罰が当たったんだよ」
「えっ!?」
「私ごときが海翔と付き合ったりするから。海翔もきっといい迷惑だったんだろうね」
「奈緒ちゃん、それは違う! 海翔は…」
「今は海翔の話はしたくない!」
「奈緒ちゃん!!」

 希一君が大声を上げた。

「今は1人にして…」
「…分かった。でも、これだけ言っとく、海翔は迷惑だなんて思ってねぇよ。信じてやれよ」

 タッタッタッ。
 希一君は私を1人にしてどこかへ行った。

「…迷惑だって思ってるよ…。絶対…」
「そうだと、うちも思う」
「えっ!?」

 そこにいたのは仁南さんだった。

「海翔君は奈緒ちゃんみたいな一般人って感じな子じゃあ満足しないのよ」
「…」
「分かってるの!? 海翔君はアンタじゃなくてうちを必要としてるの!!」
「…」
「はっきり言って、アンタ邪魔なのよ! 迷惑!」
「分かってるよ! 海翔にとって私は迷惑な存在よ! そんなのとっくに知ってるってば!」

 仁南さんの言葉が胸にズキズキ刺さってきて、ついに口を出してしまった。

「ヒック。海翔だって…迷惑って思って…」

 その時、私は大好きな香りに包まれた。

「はぁ、思ってねぇよ…」
「か、海翔!?」

 海翔は走ってここまで来てくれた。それだけで十分だよぅ…。

「海翔君!!」
「俺が迷惑だって思ってるのはてめぇだよ! 知原仁南!!」
「!?」

仁南さんは目に涙を溜めていた。

「だって、そんな子よりうちの方が海翔君ふさわしいに決まって…」
「ふさわしいとかふさわしくないとかじゃねぇんだよ! 俺は奈緒がいいんだよ! てめぇなんか俺にとって不必要なんだよ!」