【海翔side】

 奈緒が泣いてた。泣いてる理由は正確には分からねぇが…俺が関わってる事は察しがつく。
 あの女のせいでもあると思える。
 取り合えず、宿舎まで戻るか。

「はぁ、はぁ、奈緒…」

 部屋や隅まで探したが奈緒の姿は見当たらねぇ。奈緒だけじゃねぇ…希一の姿もねぇ。
 ん? あれは…希一か?

 海翔の目に入ったのは缶ジュースを2個持った希一が歩いて行った。

「おいっ! きい…ち」
 
 俺は希一の名前を呼ぼうとした時、仁南に腕を掴まれた。

「海翔君っ!! やっと…捕まえたし!」

 全速力で仁南が海翔の後を追いかけてきた。

「てめぇ。俺に触んじゃねぇよ!」
「なぁんで? いいじゃん♪」

 はぁ? 何がいいんだし!?

「香水くせぇんだよ。服に匂いがつくじゃねぇか」
「海翔君にフローラルなうちにメロメロになって欲しくて❤」

 誰がお前なんかになるかよ!

「…いい加減にしろよ! 俺には奈緒がいるんだよ! お前なんか俺には不必要なんだよ」
「!?」
「だから離れろ」

 バッ。仁南は勢い良く海翔から離れた。

「何よ…。あの女なんかよりうちの方が何倍も海翔君に合ってるのに!! 絶対うちに惚れさせてあげるからっ!!」

 チュッ。そう言って仁南は海翔の襟元を思いっ切り引っ張ってキスをした。

「海翔!? お前っ…!?」
「…」

 そこにいたのは希一と…奈緒だった。
 最悪だ…。