「ここが旅館なの? 希一君」
「あぁ、そうだよ。ここが俺や奈緒ちゃん達が泊まる宿舎だよ」
「まぁまぁなとこだな」

 確かにでかくも小さくもねぇ。

「海翔君が言う通りだねっ。でもでも、うちと海翔君が一緒に寝るには良いとこじゃなぁい?」

 はぁ? てめぇ。何こんなとこで大胆発言してんだよ。希一や奈緒がいるじゃねぇかよ。奈緒に誤解されたら、どうしてくれんだよ。

「…いっ、行こうか? ねっ。奈緒ちゃん」
「あ…うん…」

 おいおい! めっちゃ、希一と奈緒に聞こえてるじゃねぇかよ!

「お、おい、奈緒…」
「うちらも行こうっ♪」

 いい加減にしてくれよ! 奈緒と話もさせねぇ気かよ!
 そして気まずい空気で部屋についた。
 4人部屋だった。良かった。2人だったら、ぜってぇ仁南となるに決まってる…。

「なぁに? 何で2人にしなかったのー?」
「えっ? 2人の方が良かったの仁南?」
「当たり前じゃん!」
「そんな俺と…」
「希一とじゃあないしー、海翔君と2人が良いしー!」
「…そう」

 超気まずいし…。どうしてくれんだよ、この空気。

「まぁ、良いよ。4人で」
「…」

 皆無言…。ぺちゃくちゃ話してるのは仁南だけ。

「あ! 見て見て、海翔君! 海だよ! 泳ぎに行こう」

 海? あぁ、ホントだ。奈緒も行きたそうな目をしてる。

「奈緒も行きてぇの?」

 俺は思い切って奈緒に話しかけた。

「えっ!」

 いきなりだったから驚いたみたいだ。

「いいよ!! 奈緒ちゃん達は!! うちらで行こうよ。ねっ。海翔君」

 何だよ、これじゃあ、まるで奈緒が邪魔って言ってるだけじゃねぇかよ。

「…私は良いよ…。海翔と仁南ちゃんで行ってきて…」

 はぁ? 奈緒、お前何言ってんだよ。

「ほら、奈緒ちゃんが行きたくないみたいだし」
「いや、行くよね? 奈緒ちゃん」

 希一が泣きそうな目をしてる奈緒に問いかけた。

「えっ…でも…」
「決定。海翔、俺達も行くから」
 
 希一…。お前、ナイスだ!

「おぉ」
「ちっ」

 何、この女、超感じわりぃ。
 こうして4人で海に行く事になった。