【海翔side】

 あれから1時間半が経った。
 希一と奈緒は、すっかり起きていた。だけど、さっきから俺の膝の上で寝ている、希一の女、仁南が起きねぇ。

「うわぁ~、また希一君に負けたぁ~」
「アハハ、奈緒ちゃん、弱すぎだよ」
「うぅ」

 希一と奈緒はトランプに夢中だし…。
 俺が、他の女を膝枕してても奈緒のヤツは嫉妬もしねぇのかよ。

「うぅ~ん…」

 ちっ。やっと、この女起きやがった。

「おい、てめぇ。いつまで寝てんだよ」
「あ…海翔君…おはよ」
「さっさとどけよ」
「へっ? …あぁ! 海翔君、膝枕してくれたのぉ~?」
「重いんだよ。さっさとどけ」
「あぁん。海翔君、ひど~い」

 いい加減にしろよ。キレるぞ。
 俺は、まだ膝に仁南の顔があるのに、思いっ切り立った。
 仁南は、思いっ切りシートに頭をぶつけた。

「いったぁい。海翔君、何するのよぉ」
「…どかねぇお前がわりぃんだよ」

 俺は、奈緒の方へ行こうとした。

「あぁ! 海翔君。どこ行くの?」
「てめぇには関係ねぇだろ」
「うちを置いてかないでよ」

 と言って、仁南は俺の腕をグッと掴んだ。そして、座席に座らせた。

 ドサッ。

「おい。離せよ」
「いーや」
「俺は奈緒のとこに行きてぇんだよ」
「…だって、奈緒ちゃん、希一と仲良くトランプしてるじゃない」
「それでも俺は奈緒と話したい」
「うちとも話してよ」

 はぁ? 何考えてるんだコイツ。存分話してやったじゃねぇかよ。

「話してやったじゃねぇかよ」
「まだ、たぁくさん話してないじゃーん」

 はぁ。意味わかんねぇ。

「ねっ?」

 俺と仁南が、こんなやり取りをやっている間に新幹線は目的地に着いた。

「はぁ。やっと着いたぁ~」

 奈緒が背伸びをして言った。

「そうだな。じゃあ行こうぜ」

 希一が皆に声をかけ、皆が旅館に向かった。
 その間も俺は奈緒と一言も会話出来ず、仁南に付きまとわられていた。
 奈緒は相変わらず希一と話していた。